はじめに
天邪鬼を自認する私は、かなり理屈っぽい人間である。
ただ、疲れやすい眼を酷使して難解な字面を追うほど、熱心な読書家というわけではない。
ようするに外から仕入れた理論を、独自に再構築するだけの教養はない。
そんな私の屁理屈の源泉は、夢に在る。
夢の中で、私はあれこれ理屈をこねくり回す。
そこで出会った相手と議論も交わす。
もっとも、ご多分に漏れず、たいがいの夢は目を覚ますと同時に忘れてしまうけれど、時々、しゃべったり、聞いたり、思った言葉の一言一句を、その時の情景とともに克明に記憶していることがある。
最近とみに太ったせいか、左半身を下にして眠っていると、心臓が圧迫されて、強迫観念にかられた夢を、しばしば見るようになった。
レム睡眠下の議論や思弁も、息苦しさの分だけ、激烈、辛辣を弥増す。
ただし、遺憾ながら、これら虚構の見聞記録は、事新しく叩き台にして一文を編み、世間に開陳するほどの価値はないものと自覚する。
さりとて可惜忘却にまかせるのは忍びなく、創作は完全排除、目が覚めてから抱いた主観もはぶき、見た夢をそのまま再生する手法を用いつつ、覚書として著しておく・・・
|
|