麗しき悪夢の苑 ワットケーク


タイ国 北東地方ノンカイ

ノンカイのメインストリート・・・
わずか数百メートル...♪



 バンコクからノンカイへのアクセスは、鉄道なら十二時間、長距離バスだと十時間。前者は千バーツ、後者は四百バーツでお釣りが来るくらいの運賃で直行できる。
 カネより時間を惜しむ向きには、国内線のTGでウドンタニへ飛び、リムジンバスに乗り継ぐルートがお勧めだ。







 うらびれた国境の町からメコン川に沿って東へ行くと、ワットケークという、へんてこな寺がある。トゥクトゥクを50バーツくらいでチャーターすれば、余裕を持って見に行くことができるはずだ。


 "ワット"が「寺」というのは、ちょっとタイに関心のある日本人なら誰でも知っているだろう。
 一方、"ケーク"とは、もともと「お客」の意味である。だが、実際にタイの巷間では、アラブ人やマレー・インドネシア人、そしてインド亜大陸系の人々を指す、広義の固有名詞的代名詞として用いられている。


 …さて、ここはいちおう仏教の寺なのだが、しばしばバラモン寺院と誤解されている。無理なからぬ話である。



 ヒンドゥー教の神々みたいな風体の奇をてらったオブジェがあまた混ざりこみ、それでもって、地元の連中から「インド人の寺」とあだ名されている次第である。


 ちなみに私は、この「寺」で、これまで一度もお坊さんの姿を見たことがない。
 出会うのは平服姿の瞳が澄んだ敬虔な人々ばかり…本当に、ちゃんとした「お寺」なのだろうか?


 "ルアン・プー"は、何の目的で、こんなシュールなオモチャ箱のような寺を建てたのか・・・?
 オーパーツじゃなし、調べてみれば造作もなく判るだろうが、そこまで真面目に研究する気もない。 


 「地球の歩き方」には、"閉鎖された遊園地"という印象が紹介されていた。言い得て妙、である。


 閑散とした境内(?)では、めったに人の姿を見かけることがない。いつも、私ひとりがこの珍奇な風景を独り占めしているような塩梅だ。

 門前のココナッツ売りのオバハンのシノギが成り立つのも、よくよく考えてみれば、謎である。静寂の中、あからさまに胡散くさいコンクリートの造形たちが、薄気味悪い微笑で来訪者を品定めしているかのようだ。





 すべてのオブジェに共通する微笑は、訪れる人に対する慈悲と悟りへのいざないだそうだが・・・どうしてもいっぺん、満月の夜に訪れてみたい「迷刹」ではある。


ラオス領ワットシェンクアン
(ブッダパーク)へ・・・


もどる

[PR]動画