糖尿病的経済感覚

at 2003 10/05 00:23

 夕飯を食らって風呂に入ろうとしていたら、某政党の人が、機関紙を取ってくれ、と勧誘に来た。実名を出しては気の毒なので、ここは誰にも判らぬようK3党としておこう。
 ・・・しかし、今までの地区委員の人が更迭されたのかどうか知らないが、いずれにしても、初めて観る、真面目そうな人だった。党勢後退の煽りを受けて、引継ぎがまともになされていないのだろう。前任者は、新しい人に、おれン家のこと、何も話していなかったと見える。
 窮鳥懐にいらずんば猟師これを撃たず・・・寒そうにしていたので、まずは駿河の銘茶(100g/\200)を淹れてさしあげる。
 「お忙しそうですね」
 と言うので、
 「失業者ですから、暇ですよ」
 と誘い水。で、話は当然のように最近の失業問題とやらを切り口に始まった。
 失業問題は、小泉政権と、政府に首切りを容認された企業が悪い、と、おじさんは力説する。だからア○○タを読め、ってか?あいにくおれはエロ記事が出ているスポーツ新聞しか読まぬのだ。しかし、せっかく来てくれたのに、無碍に断るのも忍びない。一時間ばかり、先方の言い分を承る。理論上の不備が目立つので、そんな筋合いでもなかったが、その都度、おれが補足しておいた。
 すっかり元気になったおじさんに、おれは訊いてみた。
 「貴党が認識している良好な景気ってのは、どうも自民党と同じで、バブル経済なんですね?正気で、そんな風に思っとるんですか?」
 人柄の良いおじさんの頬に、うれいがさした。
 おれは、以下のような自論を開陳した。

 ・・・・
 日本の一般庶民が「貧しい」などと決め付けているが、大抵の家庭に自家用車があり、テレビをつければ低俗な娯楽番組の垂れ流し。少なからぬ国民が、次の週末は何処へ遊びに行こうか、今日の夕飯は何を食べようか・・・などと言っていられる国の、一体何処が「貧しい」のか?イラクやアフガニスタン、パレスチナのガキどもの前で、同じ台詞が言えるかどうか、いっぺん、胸に手を当てて考えてほしい。
 景気が悪い、と言われるようになって久しいが、いつの時代と比べて景気がわるいと言っているのか?
 失業問題云々というが、職安に行けば、求人は山ほどあるではないか。
 慮るに、失業問題の根源的原因は、たとえば「自分は大学を出ているのだから、ビルの掃除なんて、やりたくない」といった、選り好みであろう。
 冗談ではない。
 ネパールあたりの奴らなんか、学校の先生までもが、二年間の月給二百ドルほしさに、不法就労ギリギリの身分でマレーシアのゴム園に働きに行くのだ。
 大卒だろうが、元エリート(?)だろうが、便所掃除ができるようになれば、失業問題など即刻霧散するだろう。しかし、こうした幻覚を日本人に植えつけたのは他ならぬバブル経済ではなかったのか?三十年先の原資まで食い潰し、その後、何ら真新しい材料を生み出し得ない状況下、貴党はどんな打開策を以って景気回復を実行できるのか?
 はっきり言って、無理であろう。
 考え方を転換しろ。バブル経済とは、人体で言うところの糖尿病。それが今、徐々に正常な体質に戻りつつあるのだ、と。
 その上で、今後の舵取りを考えよう・・・

 つい、長広舌になり、二時間ばかり意見を述べて、「ウチは右翼なんです」と告白(?)し、勧誘員の方には、十一時過ぎにお引取り頂いた。

 革命が起きたら、おれ、真っ先に殺されちまうかもなぁ。



暴力団員と銀行員の違いはどこか?

at 2003 10/10 14:08

 前者は自分がヤクザだという自覚があり、後者は自分がヤクザだという自覚がない。後者の場合、特に頭の悪いのになると、自分を社会的エリートだと信じきっている・・・

 面白いよね、近頃の親御さんってのは、子弟に高い教育費をかけて、ヤクザにしたがる人が大勢いる。
 ・・・ぬわに? 落ち零れがいじけてる だと? 馬鹿野郎 ! 物事の本質をまっすぐ見てから物を言え。そもそも百姓民族である我々日本人の社会では、昔から不労所得で食いつなぐ稼業を傭劣(ヤクザ)と総称した。
 銀行ばかりでなく保険や証券の元祖とも言える無尽講も、例外でないどころか、その最たるものだった。いいか、貸し剥がしに狂奔するちんぴらだけでなく、保険屋も株屋も耳クソほじくって、よく聞いておけよ。

 だから、明治の頃、高邁な理想を掲げた渋沢栄一が第一勧銀を興しても、そこに勤務する行員たちは、正月に親戚一同集まる席上で、自分の勤務先を、羞恥心から口にできなかった・・・それが、世の中の本質を弁える理性的な人間の在るべき姿だろう。
 こうやって、昔のことを持ち出すと、すぐ「時代が違う」などと言って軽薄才子がヘラヘラしながらしゃしゃり出る。
 オイ ! こらっ ! そこのオマエ。 オマエだよ、むっとした顔で、いまログオフしようとした、オマエ。時代が変わる、ということは、文明の発展を以って、はじめて是認するべきことじゃないのか?
 ならば問う。
 貴様はこれまで、一体どんな形で文明の発展に寄与してきたというのか?
 こんな問いかけに答えられないような非生産的人間に、歴史や伝統を軽んずる資格はないよ。

 しかし、銀行員よりかは潔く、賢明だけれど、暴力団員もいかんね。
 ヤクザってのは渡世人。故深作欣二監督ににべもなく否定されちゃったけれど、見栄でいいんだから、臆病な大衆に「任侠道」らしきものをチラつかせてくれなきゃな。
 暴力団員の本質を、ヤクザ=侠客という原点に引き戻す自己啓蒙を促したい。
 古今東西、どこの国でも、社会には政治家や官吏が立ち入れない庶民の領域というものがあり、そこで起きたもめごとを適宜解決していくのが、いわゆる「親分さん」だった。
 清水の次郎長を見るがいい。天領と寺社領が入り乱れた駿河湾で起きた海難事故。犠牲者を弔ったのは、渡世人たちだった。広大な富士山麓を開墾し、人口過密な駿府城下から、大勢の困民に新天地を提供したのも彼らである。
 山口組だって、もともとは日本のインチキ・コミュニスト恃むにあたらず、と割り切った神戸港の港湾労働者の互助会ではないか。大阪ミナミにおける第三国人との戦いも、東京の銀座警察を彷彿させる天晴れぶりではないか。宗右衛門横町の古老たちに問いたい、
 「当時の山口組の兄さんたちの男っぷりは如何でしたか?」。
 アウトローにゃ違いなかろうが、日本語には「義賊」という言葉もある。

 男気がアナクロニズムな死語となって久しい現在、こうした義侠心の発露は、NPOという鼻持ちならない横文字で表記されるようになってしまった。
 まあ、仕方がねえか。ちんぴら以下のオイラにゃ、外来語がお似合いよ。べらぼうめ。



「民主主義」って、何ですか?

at 2003 10/20 20:23

 この質問に答えられない人が真の民主主義者である可能性は(本人がどう思っていようと)絶無であるが、世の中おかしなもんで民主主義の何たるかをさっぱり理解していない愚民に限って、民主主義を無上の政治体制と受け止めているフシがある。
 そういうのは「まつりごと」には違いないが、政治でなく、「宗教」、突き詰めれば「狂信的カルト」に分類されよう。

 その実、私も共和体制を漠然と希求する者ではあるが、ご多分に漏れず肝心の民主主義の定義が理解できてなく、また周囲を見渡しても選挙をタレントの人気投票と履き違えている人が余りにも多いため、この国民すべてが英明で、且つ強靭な自制心と理性の保持者であることを前提とするユートピアは、まだまだ遠い未来に実現の糸口が見つかるかも知れない、程度のあやふやな青写真と弁え、当座、自分と子孫10代くらいまでは喜怒哀楽を素直に表現できる「帝国主義者」でいたほうが無難ではなかろうか、と考えている。
 少なくとも、勉強不足甚だしく、精神修養も足りない私には、民主主義を唱える資格など、みじんもない。

 さて、南洋諸国を二十年もほっつき歩いていると、さまざまな国で、民主主義という名の熱病に執りつかれた民衆と邂逅する。
 今日、たまたま去る5月30日、ビルマ北部で謀殺されかけたアウンサンスーチー女史が軟禁を解かれる云々という報道を耳にして、この出口のないテーマを考えてみる気になった。
 「ビルマ」と「ミャンマー」という呼称が混合されているので、まず整理しておく。
 この呼び名そのものは、日本を「ニホン」と読むか「ニッポン」と読むか程度の違いであって、慣習上、たいして深い問題でもないのだが、1988年10月に発足した軍事政権の文民総裁マウンマウン内閣が、国際社会に対して「ミャンマー」を正式国名とする旨通達したため、NLD(国民会議=民主化運動)が反発、アウンサンスーチーやアウンジーのグループは「ビルマ」という国号に拘り続けている。
 だから、日本やその他の国で知り合うピュー国(900年前のイラワジ河畔の国名)人や関係者と話す時、どちらの国名を用いるかによって、おおむね立場が解るのだ。ただし、私の場合、民主主義など百年早い、という認識ゆえ、軍事政権の存続を是認する思弁に立っているものの、ファイティングピーコックの旗に率いられた独立義勇軍と時空を越えた因縁があるため、仁義上、ビルマの呼称を用いている。
 ・・・ま、こんな枝葉末節で角逐するようじゃ、あの国の民主化は、百年どころか、千年の河清だね。

 のっけから話が横道へ逸れてしまったが、ビルマで現体制転覆を夢見る青年と出くわすと、私は必ず表題に書いた質問をぶつけてみる。百人以上に訊いたと思う。しかし、一度として明朗な回答が引き出されたことはない。わけのわからない民主主義をお題目に掲げさせ、開発途上国の無垢な若者たちを「圧制者」の銃口の前に立たせるグローバル・スタンダートの因業は石山本願寺と同じくらい深い。
 だが、だまされる奴らも悪い。人間として扱うからには、相手にも相応の知能という名の責任を要求するのは当然のことである。その前提で言うと、傍観者は彼らを、所詮「適者生存」の枠組みから外れた生命として見殺しにするしかない。
そもそも、アウンサンスーチーが軍事政権に成り代わってLLDCのビルマが何らかの好転を得る、という妄想からして根拠がない。
 如何に英雄・緬田紋二の娘とは言え、一度は英国のマル経学者の女房になって祖国を捨てた女である。そうした人物を御輿に担いで、どうして国が変わるのか?
 よしんば政権交代があっても、現在の軍事政権に辟易している民衆は、期待の分だけ、大きな裏切られ方をするのが関の山であろう。何をするにしても、ビルマには原資がないのである。

 幼稚園児に大学の講義を聴かせ、レポートを書かせるのは無理というものだ。ビルマ民衆をダシにさせてもらったが、日本人の民主主義とて、彼らのそれとレベル的にはほとんど変わらないのも、残念ながら現実であろう。




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