環境軍・設立提言書


  (総論)
 
 高度経済成長期以来の尺度で測れば、日本経済の先行きは暗い。従来の常識に則る限り打開策は、極端な増税、ハイパーインフレの意図的な創出、そして戦争の三通りしか考えられない。いずれもネガティブな手段である。
 政治家ばかりでなく、官民が一体となって知恵を絞り、新たな方策を編み出さなければならない正念場だ。
 私は社会の因果律(パラダイム)を根源から見直し、「環境」と「経済」を共存させた政策の新機軸を提言したい。したがって本案件は、趣旨、財源確保の観点から現行のODA関連法を抜本的に見直し、新たな立法を前提としている。

 如何なる場合であれ、まず自国を世界の中でどのような立場と性質を備えた国であるのか、明確な雛形を用意しておかなければ、誇大妄想めいた膨張主義と履き違えられる危惧があるので、プロジェクトを遂行するにふさわしい日本国のあり方を、現実をわきまえ、同時に理想を織り込みながら私なりに定義付けておこう。

 「対米依存度は高いものの、独自の見識と積極的な発言の意志を持つフランス型の中規模国家」では如何だろうか?
 蛇足ながら、想定される組織の編成、指揮系統などが通常の陸軍部隊に似ている点、ならびに金銭的な見返りがない事業の遂行、安いコストに魅了され、大局を見失って生産拠点を海外にシフトさせたがる軽薄な企業経営者が多い昨今、使用機材の製造ラインを「軍需産業」と定義づけることによって工場を国内に留め置く配慮から、便宜上「軍」と呼ぶに過ぎず、提言者に名称に対する格別な拘りはない。


 (目的・目標)
 
 環境軍設立の目的は、『森の信仰(神社)』に培われた独特な精神文化を背景とする環境立国・日本の顕現であり、二十世紀に破壊された森林と土壌を復旧し、人類の生存により望ましい社会環境を創出して子孫へ引き渡すことに置く。このような提案は、百年前に『あまねく有色人種の自主独立』を標榜するのと同じくらい奇天烈かつ遠大なものであるが、当面は国内370万失業者のための雇用対策、平成日本が世界に対して誇りうる環境技術、農業資材のプレゼン、および低迷して久しい重工業、海運業など、戦後日本の原動力となった基幹産業の建て直し、すなわち経済効果が最大の目標となる。


 (資金)

 資金は、現在多くの問題が指摘されているODA予算に着目したい。また、大部分の国民が反対意見を唱えているにもかかわらず、朝銀へ投入される公的資金などを差し止め、この資金を本プロジェクトへ転用する試みも検討されるべきだろう。
 また、環境軍は第二段階以降において、各国へ参加を呼びかける余地がある。環境問題に関心の高い欧州諸国では、一般の日本国民が思っている以上に"自然と共生してきた日本人のセンス"と実績を認めている市民が多い。『森つくり』は現在の国際社会で唯一、日本人にイニシアティブが許されたテーマなのである。したがって、将来的な資金は、日本円に限定され続けられる性質のものではない点を強調しておきたい。


 (邦人隊員)

 隊員は、おもに求職者(失業者)を対象に、ウェブサイトや全国のハローワークで募集する。給与体系と福利厚生は陸上自衛隊を参考としたい。しかるのち、本人の希望、職歴、適正に応じて日本思想史、農業技術、生態系学、大型特殊車両の運転、重機操作、衛生、救急医療、各地の地史、宗教学、言語、コンピューター、会計管理など(一部必須)を一定期間のうちに修得させて、各現場に配属する。
 「農協さん」の羽振りが良かったのは一昔前の話である。特殊な、とりわけて現代人が疎遠になりがちな土に関わる事業なればこそ、農閑期を中心に第一次産業従事者を非常勤教官、監督として採用するプランにも検討の余地があろう。
 なお、研修施設には、バブル時代に建てられ、その後放置された観光ホテルやリゾートマンションなどを借り上げて活用するのが望ましい。他に最近、旧厚生省および天下り官僚による特別会計の食い潰しとして批判の対象にされ、あまつさえ取り壊しに新たな80億という予算が組まれようとしているグリーンピアは、何ら矛盾なく環境軍用施設に転用できるだろう。海外に視線を向ければ、たとえば過去にODAで建てられたバンコクの日本文化会館(ラチャダピセク通り)は、現在まるで活用されていないが、本プロジェクトの現地研修センターとしてお誂え向きの施設である。


  (機材および経済効果)

 装備品は、枝葉の粉砕機など特殊な機械類をはじめ、トラック、ユンボ、ペイローダーといった工事用車両を大量に必要とする。熱帯地方では雨季にぬかるむ路面を整備し、砂漠地帯ではトラックが走れる道を確保するため、ローラー車などの舗装工事車両も忘れるわけにはいかない。また、真水の浄化プラント、パイプラインや潅水設備を建設する資材も相当な需要量が派生する。"戦略機材"は国内で製造するのが原則だから、重機メーカーでは雇用が生じ、原材料や物資を運搬する海運業も活性化する。補給線上には相応の事務職員も配置しなければならない。身体的理由や家庭の事情で隊員に参加できない求職者にも幅広い就職の道が開かれるだろう。『環境特需』が見込めるはずである。


 (活動)

 カネだけ出して人を出さず、という従来の日本型国際協力のあり方を根底から覆す。バラ撒き型の援助も打ち切り、日本人自身の手で必要な物資やプラント設営が当該国の国民に施されていくシステム作りを徹底する。つねに一過性でなく、長期的なビジョンを心がけ、たとえば農村の安定した生産力の確保、時代を担う青少年の教育・訓練といったプロジェクトを採用、実行する。

 @ 土壌改良・植林(洪水多発地帯や砂漠地帯の土留め工事も含む)
 A 有機性廃棄物を原料とする堆肥製造(同時にゴミ問題の軽減)
 B 第一次産業系事業の育成・振興(現在、北東タイで竹酢液の製造を計画中)
 C 人材育成(研修生の受け入れ、勤労者の技術向上など)
 D 交流事業(活動地で日本映画上映会などを持続可能なイベントを開催)
 E 百科事典など、日本語書籍を各国の日本語学科を設けた諸学校へ寄贈する
 F 飢餓、紛争地帯における炊き出しや医療などの緊急支援


 (外国人隊員の処遇など)

 外国に対する金銭的支援という原則に立ち還っても、庶民の雇用創出を第一に優先したい。手始めに作業現場となる国々や、その人口に対し、自国内における働き口が絶対的に足りないバングラデシュやネパールといった国々で単純作業員を募集する。
 国籍の信用を著しく損なう不法就労者の無秩序な流出にも歯止めがかかるだろう(余談だが、以前、バングラデシュの大統領が訪日する際、その私設ボディーガードが出した査証現地の申請を日本大使館は「疑わしい」として却下している)。棒給はマレーシアのゴム園よりやや高めの月額200ドルを目安に設定すればよい。海外に派遣された環境軍部隊には、これらの"外人部隊"がアシスタントチームとして合流する。環境軍はそれらを監督・指導しながら職務を遂行する。



環境軍の有機的考察


基本思想




[PR]動画